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暖炉について

2008年05月31日 16:32

暖炉について想うこと
 今、建築中の「ゆりのき台の家」は、リビングと階段室が一体となった吹き抜け空間を持っている。冬のことを考慮してリビングの床に、熱源をガスにした温水床暖房を設置している。今まで南関東エリアでは、吹き抜けがあっても床暖房で寒さに対応して来たが、それでも特に支障はなかった。その上、最近の建物には、屋根裏や外壁に断熱材を入れ、サッシもペアガラスの断熱サッシで建物が魔法瓶のような構造になっていて保温効果も高く、冬場でも床暖房だけで快適に生活できるようだ。ちなみに温水の床暖房は、温かさが均一でやわらかく感じる。設計事務所に勤務していた頃、東京ガスが床暖房を開発して間もない時期だった。試作品として茅ケ崎の別荘に設置し、その時床暖房の効果を実感した。以後の設計では、予算が許せば床暖房を設計に取り入れている。
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パネル式の温水床暖房を設置 

 ところで、今日は暖炉の話、本題に戻ると今日、那須から業者が来て暖炉の煙突工事をすることになっていた。しかし、あいにく今朝からの雨で来週に延期することになった。暖炉は、設計の段階でオーナーの強い希望によって設置することになった。今年2月、栃木の那須までオーナーに同行して、薪ストーブの輸入代理店の「オリバートレード」へ実物を見学に行った。そこは、輸入家具の展示場で、その一隅で薪ストーブは焚かれていた。かなりの広さの展示場が薪ストーブ一つでほんのりと温かく感じる。社長の説明によると24時間燃やしているとのこと、薪ストーブ一台で石油ストーブ三台分のカロリーがあるそうだ。これまでは、ストーブを飾りのように考えていたのだが、これは実用としても期待できそうだ。実際、社長の自宅では薪ストーブだけで冬を過ごすそうだ。帰りの車の中では、もっぱら薪の保管場所と薪の確保についての話題が中心となった。薪の保管場所はビルトインガレージの奥に造ることで解決。しかし、薪の確保については、チョット問題だ。千葉では、そう簡単に薪が手に入らない。そして、「楽しみも簡単に手に入らない」と言うことで、オーナーに責任を持ってもらうことで、一件落着。
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暖炉煙突部分、防水紙とラス網工事終了

 話は変わって、設計を始めた頃から、勝手に師事する建築家がいる。 それは、元東京芸大の、今は亡き吉村順三先生。その設計は、奇をてらわず、上品で細部まで優しさが感じられ、その作品や図面に接するたびに、今だに深い感銘を受ける。その先生の著書の一節に豊かな生活を送るために「住宅には、水と火と音楽が大切だ」と書いてあったことを思い出す。先生の住宅設計では、よく造りつけの暖炉をさりげなく取り入れていた。それはとても上品で素敵な暖炉だった。私には、とても真似できないと諦めていた。しかし、若いころにスイに留学経験のあるオーナーの家で、造りつけの暖炉を設計する機会があった。はじめの頃は珍しさも手伝って利用されていたようだが、その後はあまり使っていないようだ。そのこともあって、自分では暖炉の設計はうまくないと思っていた。しかし、今回、床置き型の薪ストーブを見たとき、これなら大丈夫だと思った。それはシンプルでそれだけで美しい。何も造りつけにこだわることはないと思った。
 小さい頃、風呂を沸かすのに薪をくべながらその炎を飽きもせづ眺めていると、なぜか心がやすらいだ記憶がよみがえる。多分、聞いてはいないのだが、オーナーもどこかにそんな気分があるのだと思う。飾りではなく実際に使われてこそ暖炉も価値がある。
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雨の日と日曜日

2008年05月25日 17:21

 雨の日は、なぜか気分が落ち着いて時間もゆっくりと過ぎてゆくようだ。時間は追いかけると逃げてゆくようで、待つ時間は長く、待たせる時間は短い。土曜の夜と、日曜の午前中は、近くの小学校の体育館で、小中学生を相手に剣道の指導をしている。しかし、この2,3か月仕事が多忙を極め参加できなくて少し体が鈍って来たようだ。今朝は、朝から雨。久しぶりに休みが取れたのだが、5月は運動会などで体育館が使用できなくて今日は稽古がない。
昨年の夏から飼い始めた、黒の柴犬の10か月になる小次郎も部屋の中からデッキの雨を恨めしそうに眺めている。雨が上がれば散歩に連れて行こう。もの言えない小次郎は、目と態度で自分の気持ちを表現する。出来るだけわかってやろうと思うのだが限界がある。
 しかし、毎日近くにいると声の調子や態度で何がしたいのかわかるような気がするが、これも人間の独善でしかないと思うことがある。自分にゆとりがある時はわかってやろうとするのだが、これも限界ががある。このパソコンに向かっている間に、天気が良くなって来た。近くに来てクーン、クーンと泣いて邪魔をする。こんな時は、散歩のおねだりだ。今日は午後からパソコンに向かって、ホームページの編集をして時間を過ごした。気がつくと夕方だ。こんな時は、時間がすぎるのがとても速い。近くに池のある大きな公園があり、人のいない夜には、リードを放して自由にさせると、風のように駆けて行く。
今日は、放すのは無理でも散歩に連れて行こう!
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芝犬の小次郎10か月今日は朝から雨で少しボーとしています。
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雨あがりの公園で散歩少し気分が良さそう!
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この公園の池の周りと道路に柵があり散歩には最適。緑の木々と噴水がとても気持ち良い!

分離発注方式について

2008年05月24日 11:49

建築工事の分離発注方式について説明します。
現在工事中のゆりのき台の家は、設計監理と工事もしています。最近、設計事務所が施主から直接依頼を受けて、各業者から見積もりを取って内容をチェックして、各業者を手配する方式をとるケースがあります。

 工事費の支払は、設計事務所が工事の出来高を査定して施主が支払いをします。分離発注のメリットは、経費を抑えて5~10%工事費を安くすることが出来ます。設計と監理を同時に行っているので、細かいとこまで目が行き届いて、ミスを少なくすることができます。反面、設計と施工が一緒なので、仕事に対して自己に厳しい、高い倫理観を必要とします。

 また、長年の監理の経験と業者を手配し、コントロールする力が必要なので誰にでも出来ることではないので注意が必要です。前回紹介した雨仕舞など特に注意が必要です。今年は、5月としては天気が安定しません。こんな時は、特に工程の監理に注意を払います。
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屋根のぶつかるところは、雨漏りの原因になるのでより慎重な工事が求められる。
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屋根工事半分終了したところ。

雨の日は----

2008年05月16日 23:59

 今年の5月は、いつもより雨が多い。雨はけっしてキライではない、むしろ好きなほうだ。晴れた日の日曜日は、外に出かければいけないような強迫感におそわれる。それに比べて雨の日は、ビール片手に藤沢周平の本を読みながら江戸時代にタイムスリップして、ひと時江戸の気分に浸るのも悪くない。
 
 しかし、仕事となるとこれは別だ。建築をするには一年で今が一番良い季節だが、この連日の雨で工事の遅れが気にかかる。梅雨に入る前に、雨仕舞(あまじまい)「建築用語で、雨漏りをしないように工事をすること。」として屋根や外壁の工事を終わらせるように予定するのだが、空を見上げて恨むしかない。
 
 日本の四季は、眺めるには良いが、建築にとってはこれがとてもやっかいだ。昔から、大工さんは雨仕舞をどうするか、雨に強くて、繊細で、美しい納まりを苦心して工夫をして来た。最近では、材料や工法が進歩して、大きなバルコニーの下に部屋を作るようなプランも可能になった。それでも、雨水の排水口や、サッシの下端の施工には、十分な注意を払わないと後悔することになる
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↑バルコニー防水工事中です。
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↑ゆりのきの家工事中、外観写真です。
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↑屋根はガルバニューム鋼板葺きです。用心のために防水紙は二重に葺いています。
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↑屋根と壁のぶつかるところは、特に慎重に施工、防水に注意します。金属屋根なので雨音を軽減するために、茶色に見える遮音シートを敷きます。


ごまめの歯ぎしり

2008年05月10日 02:44

ごまめの歯ぎしりとは旺文社国語辞典によると「力の及ばない者がいくら憤慨しても何にもならないこと。」最近では諦めにも似た気分で思うことがある。そして、些細なことに一喜一憂しながら、時の流れに身をまかせていることが楽だと思うのだがそれも寂い。時には心に思うことを吐露してせめてもの慰めとしたい。
 
 仕事にも関係するのですが、建築家と言う言葉を新聞、雑誌で目にする時、建築家と言う職業はあるのだろうかと疑問に思うことがある。他にも、画家、音楽家、書道家、など芸術に関係する職業に対しての呼称のように思うのだが、先日柔道の井上康生選手がテレビのインタビューに答えて、自分のことを柔道家と言っていたが、康生選手のような超一流の人の口から出ると、抵抗なく聞こえるのが不思議だ。

 そこで考えて見ると、「一家を成すとか」 「一家言を持つ」などの言葉から類推すると、一流の人にふさわしい呼称と言えそうだ。私は密かに建築家を自認しているのだが、人前では気恥ずかしくて言葉には出せない。恩師がよく建築は「哲学だ」と飲むとよく言っていたが、恐らく志を高く持って仕事に取り組めとの教えだったと思う。そして、時に挫折しそうな時に建築家として恥じないようにしようと心がけている。