2008年10月25日 00:36
今年の夏は、温暖化のせいかやたらと暑かった。夏の間、帰宅するとまず庭に水をまく。すると、今まで肌にまつわりつくような暑さが、少し和らいで涼しくなる。庭の片隅に据え付けた、高さ90cmの岩の上から落ちる水を、勝手に八千代の滝と名付けて一人悦に入っている。この滝は、通路の地下に専用のタンクを設置して、水中ポンプで循環する仕掛けになっていて、更にタイマーを組み合わせているので、好きな時間に、滝を流すことができる利点がある。
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八千代の滝
庭に水を撒き終わると、傍らでは、小次郎がアジの開きのポーズで、デッキの床に腹を付けて寝そべっている。片手に缶ビール、水の音を聞きながら庭を眺めていると、小さな幸せな一時が過ぎて行く。
夏の間は、うっかりすると、水道料が通常の月の2倍近く掛かる。我が家は、雨水を駐車場の地下タンクに集めて、庭の水とトイレ、洗濯に利用している。しかし、タンクの水が無くなると、自動的に水道水が補給される仕組みになっていて、それなりに節水の努力はしていても、今年の夏のように雨が少ないと、遠慮しながら庭に水を撒いている。
気がつくと、夏の暑さも和らいで、蝉の声に代わって秋の虫の音が、木の上や庭の草むらから、うるさいほどに聞こえていたのが、いつの間にか、かすれた物悲しい鳴き声に変わっていた。時間は、虫にも、人の上にも平等に、そして無情に過ぎてゆく。
耳を澄ますと、庭先から色々な虫の音が聞こえて来る。でも、どんな虫が鳴いているのか姿は見えない。そんなとき偶然、NHKで虫の音の特集を見る機会があった。番組では、虫の生態が紹介されていてとても興味深かった。そこで、見ていない人のために、NHKに代わって内容を簡単に紹介してみたい。
秋の虫の代表は、スズムシ。あの華麗な鳴き声を思い出しても、姿はどうだろう。スズムシは鳴くときに羽を広げて、互いの羽を1秒間に60回と、超高速でこすり合わせて、あの鈴のような音を鳴らす。一方で、一般に馴染みがあるのはコオロギだが、これはとても種類が多くて、鳴き声も異なっている。番組では、虫の鳴き声に美声の区別はあるだろうか、あるとすればどんな反応を示すか、スズムシを使って実験をしていた。
話の前に、鳴くのはオスだけでメスは鳴かないそうだ。まず美声の鳴き声のオスとそうでないオスを、それぞれ別なカゴに入れて離して置く。(片方のスズムシが、美声であると分類したのはスッタフだ。)そして、その周りに40匹ほどのメスを放す。すると、驚きの結果は、美声の持ち主のスズムシの方に全てのメスが集まって、哀れにも片方のオスのカゴには一匹のメスも寄りつかなかった。
スズムシの世界では、オンチで声が良くないのは、メスに振り向きもされないと言うことだ。あ~あ、残酷、スズムシでなくて良かった。それにしても面白いのは、人間が美声の持ち主と判定したオスがメスに支持されたとは、人間が凄いと考えるのか、それとも美しいものに境界は無いと言う新たな発見なのか、NHKではそのことに何も触れていなかった。
そのあと番組では、スズムシ、コオロギ、マツムシ、カンタン、カネタタキなどの虫の音をゲストに聞かせて、クイズをしていたのだが、日ごろ姿を見たことが無い虫を、鳴き声へ付きで紹介してくれたので、大いに参考になった。番組の後、すぐに庭に出て虫の音を聞き分けてみると、ほとんどがコオロギの音で、かすかにスズムシの音も聞こえる。木の上から降るように鳴いていたのは、アオマツムシだと解ったのは収穫だった。
ここで、コオロギの鳴き声についても少し触れておきたい。コオロギは時と場合によって3種類の鳴き声を出す。
一つ目は、求愛の鳴き声 (夕方と朝方に弱くやさしく鳴く)さそい鳴き二つ目は、縄張りを守る鳴き声 (夕方から夜にかけて少し強く鳴く)ひとり鳴き三つ目は、相手を威嚇して鳴く声(オス同士が出会った時に強く短く鳴く)けんか鳴き
ところで、虫には耳があるのだろうか。答えは、コオロギは前足の肘の外側に鼓膜があり、スズムシは内側に鼓膜がある。前足にあることで集音器の役目をすると同時に、相手の方角を確認することができる。そして、耳を持っている昆虫は、主に自分で鳴く虫で、そんなに多くはないそうだ。
その後、デッキに腰かけて虫の音を聞いていると、小さな庭で、小さな命が、懸命に生きている姿が目に浮かび、今までと違った世界が見えて来る。そばで、小次郎も一緒に虫の音に耳を傾けている姿を見ると、何を考えているのだろうと考えると、おかしくもあり、不思議な気持ちにさせられる、秋の夜の一時だった。

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虫の音に、何を思うか?小次郎!

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音はすれども姿は見えず!
参考までに、虫の鳴き声を擬音で紹介すると、
エンマコオロギ:コロコロコロリー (体長が20mm~25mm)で一番大きくてよく見かける種類
オカメコオロギ:リリリリ、リリリリ
スズムシ :リィンー、リィンー
マツムシ :チンチロリン
カンタン :ローローロー
カネタタキ :チンチンチン
アオマツムシ :リーリーリー
実際の声は、全体に澄んで甲高く聞こえる。また、人によって聞こえ方が違うので、擬音で表現するのは難しい。スズムシや、コオロギは、植物も動物も食べる雑食で、江戸時代からスズムシの飼育方法の指南書があって、良い声で鳴かすには、鰹節や煮干しなどを与えると,良い音色を出すと教えている。
羽には、それぞれ、やすりと爪の役割があって、高速ですり合わせて高い音を出すには、硬い方が良い。それには動物性のタンパク質が必要だそうだ。秋の終りになると、羽も傷んでかすれたような弱い音色になるのが理解できる。それでも精一杯鳴き声を出しているので、物悲しく聞こえるのかもれない。
上記については、出来るだけ正確を期する為に、学研の昆虫図鑑を参照しました。
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