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ゴールデンウイークにアールヌーボ

2010年05月22日 22:05

 ゴールデンウイークの過ごし方

 つい先日まで、満開の桜並木と思っていたのが、色々と仕事が重なって対応に忙殺されている内に、いつの間にか桜並木が、新緑に変わっていた。4月29日、ゴールデンウイークの初日、千葉で一番早い海開きが、九十九里の片貝海岸で行われた。その日は、黒芝の小次郎の予防接種の日で、いつもお世話になっている市原の動物病院まで出かけた。

 小次郎は注射が苦手で、(人間だって嫌いなのだから当然と思うのだが!)いつも診察台に上がると震えがとまらないのが、その日は院長先生の担当で、優しく声を掛けられ、私が、首を抱いてやると震えも止まって無事に注射を終えた。

 帰りに、遠回りだが九十九里に近い大網白里に建築中の現場があるので、工事の進み具合を確認のため現場に寄った。その後、昨年、設計依頼があって、片貝海岸の近くに自力で別荘を建てている施主がいるので、現場の様子を見に行った。生憎、現場には施主が居なかったのだが、折角ここまで来たので、小次郎に海を見せてやろうと思って片貝海岸まで行った。

 海開きは、午前中に終わったらしく、サーフィンを楽しんでいる人が何人かいたが人影はまばらだった。海岸の砂浜で、持っていた小次郎のリードを離すと、砂を蹴って一気に波打ち際まで走って行った。打ち寄せる波が不思議な様子で、濡れないように用心しながら波打ち際まで行って潮の香りを嗅いでいた。小次郎は、初めて海を見て何を感じたのだろうか、聞けるものなら聞いてみたい気がする。

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小次郎、初めて海と対面

 さて、今年の連休中の過ごし方なのだが、連休前に知人に新しい施主を紹介された。建築現場は東京の一等地で、敷地は広くないが、三差路に面したランドマークになるような立地だ。施主の話を聞くと若いころにフランスに留学をしていて、アールヌーボの建物に興味を持ったとのこと。

 希望はアールヌーボ風のデザインでまとめてほしいとのことだが、正直に言うと建築の歴史で少し習った程度でよく分からない。率直にその旨を伝えたのだが、二週間ぐらいでまとめてほしい、デザインを見てダメなら仕方ないとのこと。ゴールデンウイーク前に大変な宿題を抱えてしまった。

 連休中に故郷に帰ることにしていたのだが、家内だけを実家に帰して、小次郎と留守番をすることに決めた。地元の図書館では十分な参考資料がないので、千葉市の中央図書館まで出かけた。流石に、県庁所在地の市だけあって資料も豊富だった。しかし、問題なのは千葉市に居住地がないので貸し出しが出来ない。従って、連休中は図書館通いとなった。

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千葉市立中央図書館の入り口
 
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入り口を入ると、大きなガラス張りのアトリュウムが迎えてくれる

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個室で区切られた閲覧室

県立の中央図書館にも資料があったのでこれは借り出しを受けて持ち帰ったのだが、美術の本は大きくて、重く、カラーで編集されていて、高価なので扱いも慎重にしなければならない。連休中は、小次郎の散歩以外は図書館通いの成果があって、少しはアールヌーボの歴史と特徴が理解できた気がする。

 これをもとにプランとデザインをまとめて、依頼主に会ったのだが、予想に反して、アールヌーボの植物をモチーフにした曲線のデザインは好みでないと言う。どちらかと言うと新古典のデザインが好みのようで、ドアとか内装をアールヌーボ調にしたいことが解った。再度プランを練って出直すことにした。

400px-Emile_Galle-Vase_mg_1814[1]

エミール.ガレの花瓶

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アールヌーボの家具

 アールヌーボの建築について学んだことについて、本の受け売りだが少し触れてみたい。アールヌーボは当初は、新しい工芸運動として、一九世紀末から二〇世紀の初頭にヨーロッパで花開いた芸術活動だ。アール、ヌーボとは、フランス語で「新しい芸術」だそうだ。最近日本でもなじみのワインのボージョレ、ヌーボが有名だが、これは、ボージョレ地方でとれた「新酒のワイン」と言うことになる。

 アールヌーボの特徴は意外性と物語性、東洋的で繊細な曲線、自由で多彩な装飾をモチーフにしたデザインだ。建築のデザインとしてはベルギーのブリュッセルに、一八九三年ヴィクトール、オルタが「タッセル邸」を設計したのが最初だと言われている。その後、ヨーロッパ各地でその土地の伝統を受け継いだアールヌーボの建築が生まれた。
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タッセル邸、1893年竣工
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タッセル邸、曲線と植物をモチーフにデザインされた階段

 身近なところでは、TVのCMで放送された、バルセロナのアントニ、ガウデイーが設計した「カサ、ミラ」や、現在も建築中の教会「サクラダ、ファミリア」のような現代建築では考えららないような複雑で手の込んだ職人技ともいえる建築がある。
Sagradafamilia-overview[1]


ガウデイーの「サクラダ、ファミリア」バルセロナの観光名所で現在も建築が進行中
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エクトール.ギマールのデザイン。パリの地下鉄の入り口として現在も使用されている
 
 そして、アールヌーボの建築は、一九一四年の第一次大戦とともに終焉を迎えた。現在、百年の歳月を経て、この時代の建築や工芸品が見直されてきている。今回、この仕事がだめになったとしてもこの機会にアールヌーボを知ることが出来て良かったと思っている。
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